海璃

あの夜、私はいけないと思いながらも海璃が荷造りした荷物を見たの。
その中にはもちろんスーツも入っていたけれど、ラフな普段着も入っていた。

出張には使わないような服が入っていることを知った私は、海璃がもしかしたら別の誰かとの未来を見つけたのかもしれないと思っていたの。

ちっぽけな私はどうしたらいいかわからなかった。
思ったよりも早く、あなたが進みだしているのかもしれないと思った私はかなり焦った・・・。
おかしいでしょ?私が海璃にお願いして、海璃に約束してもらったのに。
ほかの誰かとの幸せを見つけてほしいと・・・。

これから死んでしまってあなたから離れる私といるよりも、健康なほかのだれかとの未来をつかんだのなら、心から祝福しないとならない。
でも・・・やっぱりそんなの悔しくて切なかった。

海璃は何も悪くない。海璃を責める気持ちは全然ない。むしろ私と結婚までしてくれた海璃には感謝しかない。
ただ、自分自身が悔しかった。海璃と未来をつかめない自分に悔しくて切なくて、自分が自分であることを後悔せずにはいられなかった。