「警戒心強い捨て猫を可愛がってあげてたらその飼い主にだけ特別甘えてくれるようになるみたいに、郁田さんも俺じゃなきゃダメになって懐いてくれたら面白いなって」

「はぁ?」

「可愛がりがいがあるっていうか」

「私は動物じゃないから」

餌を与えてくれる飼い主を動物が慕うのは本能だ。
私には理性があるもん。

そんなものに騙されない。

流されたりしないんだから。

「でもさっきは本能に逆らえてなかったよ。可愛い声出しちゃって。だからこんなふうになっちゃったんでしょ?」

「……っ、」

抑えてた声が手の隙間から漏れたのも、

夏目くんの熱い刺激に耐えられなくなって立てなくなってしまったのも事実だから、

なにも言い返すことができなくて。

でも、

「絶対懐いたりしないからっ!」

私はそう言って目の前の彼を軽く突き飛ばしてから更衣室を飛び出した。