沈黙を破ったのは海璃だった。

海から私の方へ視線を移した海璃。

私は海璃の方を見る。

海璃は私の目を見ないまま、私の手を自分の手で包み込んだ。

「京香は悔しい時も、つらい時も、自分の手握りしめるんだよ。」
いつの間にか握りしめていた私の手を、海璃が大きな手で開いていく。

そこには真っ赤な爪のあとがついていた。

私の手を優しくなでる海璃。

「こんなに握りしめた手で、別れを言われても、俺はどうしてやったらいいんだよ」
海璃は鋭い。

私の手を見つめる海璃の視線が切ない。