「京香」
フロアで名前を呼ばれて私はすぐに振り返る。

私たちの関係は内緒のはず。海璃をついきつい瞳で見つめてしまった。

「なんかあったのか?」
「なにも?」
海璃から目をそらしてほかの誰も私たちの方を見ていないか確認をする。

私の様子に海璃も気持ちを察してくれたのか、「わかった。今夜話きくから」と私を抜かしてフロアへ戻った。

その後ろ姿が寂しそうに見えるのは、きっと勘のいい海璃が私の作り始めた壁に気づいているからだと思う。


離れるための・・・壁に・・・