海璃

私はまだあの時、かすかな違和感程度にしか感じていなかった。

自分の体になにかが起きているなんてことはまだ予感しか感じていなくて、それもたいしたことじゃないんだろうって思っていたの。

今思えば週末の楽しみだった、お酒も、狭いソファに二人寄り添って映画を観ることも、あたりまえじゃない、すごく幸せなことだったんだって思う。


あの時に戻れたら、映画なんかじゃなく、わたしはずっと海璃の横顔を見るんだろうな。

忘れないように・・・あなたの横顔も、面影も、ぬくもりも・・・。

ねぇ海璃。
もう一度だけ、あのソファで寄り添って他愛もない話をしながら一緒に過ごしたいな。

こんなこと、言えないけど。でも、やっぱり。
私が望むのはあなたとのあたりまえと思っていた時間をもう一度だけ味わいたいってこと。

私の幸せも、願いも、希望も、すべてはあなたと一緒にあったから・・・。
あの場所にあったから・・・