「奥井唯香さん」


自分の名前が呼ばれたのだと気が付くまでに、随分と時間がかかった。


呆然としたまま座っていると、テレビカメラが目の前まで接近してきていたのだ。


「あ……」


あたしが次のターゲット?


そう言おうとしても、なにも出てこなかった。


まるですべてが嘘のよう。


今にもドッキリでした!


と誰かに言ってもらえるような気がしていた。


けど……。


「撮るな!!」


俊和の声でハッと我に返った。