仮ではあるけど、恋人同士になった真由と俺。

言いくるめるようにして強引につかんだ“彼氏”という座だが、そんなことはどうだっていい。

チャンスがもらえたんだ……絶対に俺を“男として”好きにさせてみせる。



「こ、こうくんっ……もう10秒過ぎてるよっ……!」



ちっ、バレたか……。

抵抗を始めた真由に、名残惜しさを感じながらも腕を解いた。

これ以上強引にして警戒されたら、もとも子もない。



「……ん、起きた。すぐ用意するから待ってて」

「う、うんっ……!」



顔を赤くさせながら俺と目を合わせずに頷いた真由は、足早に部屋を去っていった。

バタン!と扉を閉める音が響いて、俺は1人残された部屋で呆然とする。

なんなんだよ、あの可愛さは……。



「あー……なんであんな可愛いんだろ、マジで……」



どこまで俺を骨抜きにすれば気がすむんだろう、真由は。

本気でそう思いながら、だらしなく緩んでいるであろう顔を両手で覆った。