まさか、なんでそうなるの。

「あ、でもたまちゃんって俺の家知らないよね。ってことは、偶然?」

えらくテンションの高い高瀬は、これまでにないくらい優しい目をしている。

「あのね、高瀬」

言うのはかなり照れくさい。

「ん?」

「わたし、もう大丈夫だよ。昨日ね穂波といろいろ話したの。高瀬にはみっともないとこばっかり見せてたから、一応報告しておこうと思って」

「え、あー……そっか。大丈夫って、ほんとに?」

「ほんとほんと。西河のことも、もう忘れるし。心配させちゃったでしょ? 今までごめんね」

「謝ることじゃないよ。俺はさ」

ほのかに薄暗い闇の中、高瀬が一歩ずつ距離を詰めてくる。

月明かりに照らされた顔が、とても魅惑的。

「たまちゃんが笑ってくれたら、それでいいから」

「うん……」

ありがとう、高瀬。

「じゃ、行こっか」

──ギュッ

なぜかごくごく自然に握られた手。

わけがわからなくて高瀬の横顔を見上げる。

「俺の顔になんかついてる?」

「そうじゃなくて」

外は肌寒いのに燃え上がるような体の火照りと、顔の熱。