モヤモヤしたまま気づけば返信できないまま一週間。
十月に入って制服が冬仕様になった。
濃紺のブレザーに男女とも赤いチェックのネクタイと、深緑色のタータンチェックのスカート。かわいいと評判の制服だ。
「あ、環!」
ドクドクと心臓が嫌な音を立て始める。
穂波は嬉しそうに駆け寄ってきた。
「ねぇ、今帰り? 時間ある?」
なにも知らない穂波は、無邪気にそんなことを言う。西河は部活らしく、どうやらひとりらしい。
「駅前に新しくできたカフェが気になってるんだけど、一緒にどうかな?」
眩しいほどの笑顔を向けられて言葉に詰まった。
ふーん……。
人の気も知らないで楽しそうだね。
聞かなくてもわかるよ、幸せなんだってこと。
胸の中に黒いモヤモヤが立ち込めた。
単なる嫉妬。穂波は親友なのに、醜い感情を抱いてしまう。
わたしって……ほんと性格悪いよね。
そんなことを考えては自己嫌悪に陥って、どんどん闇に沈んでいく。
穂波がいい子であればあるほど、自分なんてと卑屈になる。
大好きなはずの親友なのに、どうしてそんなふうに思うの。
「ごめん……今日はちょっと」
そう言いかけたとき、遠くから歩いてくる西河の姿を見つけた。今から部活に行くのか、スポーツバッグを肩にかけている。
ただでさえいっぱいいっぱいなのに、グワングワンと目の前が揺れて処理しきれない。
「ごめん、穂波。またね!」
とにかく一刻も早く逃げたくて、わたしはそこから駆け出した。
向き合う覚悟も、傷つく覚悟もできてない。今はふたりに会いたくないの。