最低……。

「そこまで言うなら、たまちゃんが教えてよ」

まったく悪びれる様子もなく、淡々と返してきた。

「な、なにを……?」

「恋ってやつ」

恋……?

「そ、そういうのは教えてもらうんじゃなくて、気づいたら落ちてるもんなの」

「ふーん?」

「自分でもわからないうちに、いつの間にか好きになってんの」

高瀬相手に……。

「ああ、この人ってこんなふうに笑うんだ、こんなふうに物事を考えてるんだってわかった瞬間、突然目の前が明るく拓けるっていうか」

なにをムキになってるの。

「気づいたら目で追ってたり、気になって仕方なかったり、ずっとそばにいたいって思ったり、自分しか知らないその人の新たな一面を見つけてドキッとしたら、それはもう恋に落ちてる証拠なのっ」

気づくと肩で呼吸していた。

「高瀬はきっとしたことないよね! だから軽々しく『俺にしなよ』とか言えるんだよ! き、キスだって……」

手にはじっとり汗をかいている。

目の前にはポカーンと口を開けてるなんともマヌケな高瀬の顔があった。

まずい、わたしったら。

大真面目になに言ってんの?

恥ずかしすぎるよ。

「と、とにかく、わたしは昨日のことをまだ許したわけじゃないからっ!」

未だポカンとする高瀬を残して、わたしは大慌てで屋上から走り去った。