そう言って春香が手渡してきたのは、細いリボンできゅっと結ばれた手のひらサイズの透明の袋だった。中にチョコレートらしきものが入っている。


「ハッピーバレンタイン」
「あっ、そうでしたよね」


今日はバレンタインデー。優莉の誕生日でもある。
私生活がバタバタしていたうえ、隼との妙な関係性に戸惑っていたため、すっかり頭から抜けていた。


「うわぁ、うれしいな。今年のバレンタイン一号だ」


門倉はニコニコ顔だ。ところが喜んでいるそばから同じ事業部の先輩たちもチョコの配布をはじめたため、門倉は抱えきれないほどのチョコをゲットした。
優莉も友チョコとしておこぼれをもらいテンションが上がる。


「すみません、私、チョコの準備もしてこなくて」


気が利かない後輩だと思われただろう。