いくら焼け出された社員とはいえ、優莉は隼にとって異性。マンションに泊めたら問題になるのではと心配になる。


「いないよ」
「今、お部屋にいなくても、私を泊めたと後で知ったら」


きっとひどく傷つくはずだ。自分がその原因になるのかと思うと胸が痛い。


「だからいないんだ。部屋じゃなく、存在自体がない」
「ええ!?」


目をまん丸に剥き、素っ頓狂な声が出る。


「そんなに驚くか?」
「だって社長、とってもモテるから。恋愛経験も豊富そうですし彼女がいて当然だなって」
「モテるにはモテる」


そこは否定しないようだ。


「でも恋愛経験は普通。特別豊富なわけじゃない。ほら入って」


ドアを開いて優莉を招き入れる。
恋人がいないとわかりホッとした。