ある日、ぶたさんの前に、一匹のうさぎさんが現れました。 うさぎさんは、そのしなやかな足で軽やかに草原を駆け、純白な姿は見るもの全てを釘付けにする、とってもミリョクテキなうさぎさんでした。 ぶたさんも、あっと言う間にうさぎさんの虜になってしまいました。

 うさぎさんは人気者なのに、いやみなところが少しもなく、いつもぶたさんに話しかけてくれました。

 「ぶたさんかけっこが好きなの?私は短距離のエキスパートになりたいの!」

 広い視野を持ち、高い目標に突き進むうさぎさんの姿は、ぶたさんの目に新しい世界を焼きつけていきました。 自分の内堀に阻まれているぶたさんと、目の前の高い壁を乗り越えようとしているうさぎさん。 ぶたさんは、なんだか急に自分が恥ずかしくなりました。 そして、これではいけないと思いました。

 ぶたさんは考えました。 いっぱい、いっぱい、考えました。 こんなに自分の事を考えたのは、生まれて初めての事でした。 そしてぶたさんは、決心したのでした。

 「僕は最高の食材になる!うさぎさんのサポートをするんだ!」

 ぶたさんの仲間のお肉は栄養価が高く、力が沸いてくると評判でした。 また、かけっこが好きだったぶたさんは、身がいい具合に引き締まり、さぞかし上等な味がするのだろう、と一部のお友達の間ではかなり評判だったのです。

 生きる理由はないけど、死ぬ理由もなかったぶたさんは、今まではその好奇の目から必死に逃げ続けてきました。 けど、自分の出来る事と、うさぎさんの事を考えれば、答えはそれ一つしか浮かび上がってきませんでした。

 「うさぎさんの為に、世界一のポークになるんだ!」

 生まれて初めて目標をもったぶたさんの目は、強い輝きを放っていました。