―香港煌家―

20××年、夏。香港煌家は、朝から慌ただしかった。それは、桃花が産気付いたからだ。

春「頑張って、桃花!もうちょっと!」

竜「手、握ってて良いからな!」

桃「うぅ~~!ア!い、いた~ッ!」
桃花の額には、夏の暑さと、陣痛の痛みで、大量の汗が流れていた。

竜「ちょっと休憩しよう。これじゃあ、子どもたちが産まれるまでに、母体が持たない。水、飲むか?」

桃「うん…。ちょっとだけなら。あ~、美味しい…。冷たくて気持ちいい…。」

竜「なら良かった。桃花、もうちょっと頑張れるか?」
心配そうに、竜牙が聞く。

桃「ありがとう、竜牙。もう大丈夫よ!」
普段なら、あまり弱音を吐かない桃花だが、弱気になっていても、女性は強い。

竜「じゃあ、いくぞ!」
竜牙の号令で、再び分娩が始まった。

桃「…ハァハァ…。…アッ!…フ~、フ~。」
何度目かの息を大きく付いた。

竜・春「「頑張れ!(頑張って!)あと少し!」」

春「桃花!1人目見えてるよ!あ!2人目も!」

格闘すること、1時間―

?「オギャア、オギャア!」
?「…フギャァ、フギャァ…」

春「おめでとう!桃花、竜牙!産まれたわよ。2人の元気な女の子たちが!」
春蘭が1人目、2人目も取り上げた。

竜「やったな、桃花!おめでとう!お疲れさま。女の子達か…。嬉しいな!長たちにも、伝えないとな。…名前は、何が良いかな?」
竜牙が笑いながら、くしゃりと桃花の髪を撫でた。

桃「そうね。でも、竜牙。まだ、産まれたばかりよ?名前は、ゆっくりでも良いんじゃない?」
いつもなら、のんびりしている竜牙に桃花は、苦笑を漏らした。

桃・春((早速、親バカが出てる。ま、いいか。))

竜「そうだな。嬉しすぎて、まだ実感が湧かないな…。ん?この子……。」

ふと、竜牙の顔つきが厳しいものに変わった。あまり見たことのない顔だ。

桃「竜牙、どうかした?」

竜「いや、1番目に産まれてきた子…。不思議なオーラを持ってるな。」

桃「…え?」

竜「いや、思い違いなら、良いんだけど…。悪い!桃花。この子だけ、長に見せたいんだが…。良いか?」

桃「うん…。良いけど…。」

桃花が竜牙に不安そうな、歯切れの悪い返事をした途端、計ったように、ある人物のひと言で安心する間もなく、一気にその場が凍りついた。

?「竜牙、桃花。双子の女の子が産まれたそうだな。」

新たな声が後ろから聞こえてきた。その声に、3人は聞き覚えがあった。