瞬間、ふわっと香る彼の匂いにドキッとする。


……ああっ……やっぱり今日もダメだった……。


私は彼の腕の中で盛大なため息を吐くけど。


当の本人は、私をぎゅっと抱きしめたまま、すやすやと眠り続けているから困ったものだ。


でも、これに負けちゃいられない。


「もう、離してってば……!」


体をねじって脱出を試みる。


けど、なかなか抜け出せない。


寝てるのにこんなに力が強いってどういうこと?


これからこんなことが続くのかと思うと、気が重くてしょうがないよ……。


抱きしめられている相手はクラスメイトの男の子。


べつに、つき合ってるわけじゃない。


なんでこんなことになったかというと。


話は、今から約1ヵ月前にさかのぼる……。