「でも、今日は教えない」
「そ、そんな」
イジワルに笑う黒澤くんは本当にズルい。
私の心をかき乱していくんだもん。
「普通はもうわかってもおかしくないんだけど……でも、羽音は昔からちょっと鈍感なところあったもんな」
「ど、鈍感?」
鈍感って……鈍いってこと?
え? 私って鈍いの?
「そ、鈍感。でも、そういうとこも可愛いから、いいよ。許す」
「……っ」
ほらまたそうやって平気で可愛いとか言っちゃうんだから……。
少し熱くなった顔を隠すように目をそらす。
「さ、次の電車まであと3分! 駅まで走ろっか」
「え、ちょ……っ、待って!」
いきなりダッシュする黒澤くんに手を引かれるがままについていく私。
あぁ……完全に黒澤くんのペースにのせられてるよ……。
でも、イヤだなんてあまり思わない。
絶対に私はどうかしてる。