「天野、アメ、ある?」


会話のキャッチボール的なものを
完全に無視して、

ぽつり、一ノ瀬くんが呟いた。



こんな一ノ瀬くんにも、
もうすっかり慣れてきた。


「いっぱい持ってるよ。
どれがいい?」



手のひらに
どさっとアメをのせて差し出すと、

一ノ瀬くんが
いちごみるくキャンディーを手にとった。


おおっ!

なんだか…


「意外! でも、おいしいよねっ。
私も好き!」


「……ん」


目を細めて
小さく笑った一ノ瀬くん。


その笑顔の破壊力は、
なかなかのもの。


私も一ノ瀬くんと同じアメを一粒ぱくり。


「美味しいね!」


口のなかに広がる
その甘い味に、頬がふわりと緩む。


「ん、うまい」


かすかに表情をゆるめた一ノ瀬くんに
なんだかほっこり。


一ノ瀬くんと一緒にいると、
落ち着くな。