はやくしないと、黒澤くんにヘンなウワサ流されちゃう……!


「いってきまーす!」


バタバタと家を飛び出すと、スマホを見ていた黒澤くんが私に気づいて顔を上げる。


「おはよう」


「ご、ごめんなさい……! っていうか、黒澤くん自転車は……?」


黒澤くんは確か自転車通学のはずなのに、今日は自転車がない。


「俺も今日から電車通学に変えることにした。元々、自転車じゃちょっと遠かったし」


「え……」


じゃあそれってもしかして……。


登下校もこれからずっと一緒ってこと!?


「それに、羽音と長くいられるしね……って、なにその不満そうな顔」


あぁ……私の唯一のゆっくり出来る時間が……。


「あぁ、そっか。羽音は俺のことが大キライだもんね」


よくわかってるじゃん……って、そんな爽やかな笑顔で言うこと?
ていうか普通、自分のことキライな相手にわざわざ歩み寄る?


よくわからないな、黒澤くんは。


「ま、いいや。……あ、はやくしないと次の電車がくる!」


「ちょ、待って……っ」


強引に私の手を握って走り出す黒澤くん。
温かい黒澤くんの手に少しドキドキしながら、必死に黒澤くんの隣を走った。