…………






『お疲れ様〜』





縫合を終え、消毒を済ませて軽く片付けてから、オペ室を出ながら一気に緊張が解ける中、隣のたけるが伸びをしながらあくびをする。





「お疲れ様、ホント今、一気に疲れが出たね。」





ついたけるのあくびにつられそうになるのを堪える。





『かな、俺は途中から疲れてた…。
ホント、集中力が半端ないよな。』






集中力…自分でも知らなかったけど、この5時間に渡るオペ、私はずっと集中していたみたいで、気づいたら終わっていた感じ。






「でもね、終わってからの疲労感は半端ないからね…。そんなオペも今日で終わり!」





『そうだな。あ、今日まいも一緒に飲みに行かないか?久しぶりに。』





そんな話をする頃には、更衣室のシャワー室前まで来ていた。ここから先は男性用女性用で分かれるから、たけるとはここまで。





「えっ!?今日?
うーん…幸治さんのご飯を」





と言いかけたところで、






『俺ならなんとでもなるから、気にするな。たまには行ってこいよ。』





ビクっ!?





とその声に驚き前を見ると、シャワーを浴びた後の幸治さんが、首にタオルを掛けて立っていた。
髪が濡れた幸治さんは、何ともセクシーで、ここが職場でなければと切に願ってしまう。






「……いいんですか?」





顔色がどんなが確認するつもりで、おそるおそる見上げる。





『あぁ、その代わり酒はやめておけよ。』





という怒っているわけでもなさそうな幸治さんの声のすぐあとに、





『もちろんっ!
飲ませません!
禁煙のところにします!』





と、たけるがすかさず返事した。その様子を見て、幸治さんは安心したのか、片手を上げて返事をして、その場を去った。






「たける…私のマネージャー、いや今のは幸治さんのSだね……。」





私に何もないように、充分気をつけてくれるたける。以前にたけるのいる飲み会で、他の病院の先生に口説かれてタクシーにまで乗り込まれて……という嫌な思い出を、未だに自分のせいだと思っている。






『だってさ、アレがあった日の夜に、かなを連れて帰って佐藤先生に説明した時なんか…




人生終わったかと思うくらい、むちゃくちゃ怖かったんだもん…。
佐藤先生の顔もそうだけど、その顔の後ろに進藤先生と石川先生…それだけじゃなくて兄貴の顔も並んでるように見えたからね。』





相当恐ろしかったのか、思い出しただけでも顔色の悪いたける。





「……本当にごめんね。あらからあんまり外で食べて帰るってないんだよね。」





『いや、かなは悪くないからねっ!
今日は終わったらちゃんと家まで届けるから。』






「いやいや、そんなことはしなくて大丈夫っ!たけるまで私に過保護になってるから。」






なんてやりとりを終えて、お互いシャワー室に入ると、今までの外科でのオペ研修が終わったとドッと疲れがやってきて、つい座り込んでしまった。