一度暗いことを考え出すと止まらないものだ。嫌みったらしいお局が昼休みに言っていた言葉を思い出す。

「あの子、気持ち悪いわ〜。仕事もできなくて見た目も気持ち悪いなんてね〜」

「ああ、あの目?どうして片方だけ色が違うのかしら」

ズキンと痛みが胸に走る。菜乃花はそっと眼帯のついた左目に触れた。思わず立ち止まってしまう。

菜乃花の左目は、生まれつき色が違う。右目は黒い色をしているのだが、左は鮮やかなアンバーと呼ばれる黄色だ。そう、菜乃花はオッドアイだ。この見た目のせいで、理不尽なことを言われたりすることもあった。でも、菜乃花はこの目の色を気に入っている。

「仕事とは関係ないじゃない……」

苛立ちがこみ上げ、菜乃花は口に出していた。こんな不幸ばかり起こす神様を恨む。その時、ガタッと背後から音がした。

「……ひっ!!」

振り返った菜乃花の口から悲鳴が漏れる。背後に気がつけば男性がいた。その手には、カッターナイフが握られている。明かりに照らされ、刃が怪しく光った。