「噂を聞いた時から
おかしいな~とは思ったけどさ。

だって羽衣と一ノ瀬くんじゃ!

もし本当にふたりが
抱き合ってたとしたら、

羽衣が小さすぎて
周りから見えないだろうしっ」


「たしかに!」


「そもそも、
どうして羽衣は朝から
そんな泥まみれになってるの?」


みんなにじっと見つめられて、
制服が泥だらけになっていることに
気が付いた。


「まさか、
公園で砂遊びしてから
学校に来たなんてことはないよね?」


「さすがの羽衣でも、それはないって!」


盛り上がるみんなを前に
ガクンと肩を落とす。


ひどいな、みんな。

言いたい放題だ……


「で、本当のところはどうなの?」


「そうそう、
火のない所に煙は立たぬっていうし!」


みんなにじっと見つめられて、
しどろもどろに、朝のことを解説する。


「えっと、
花壇で花の苗に肥料をあげてたら
よろけちゃって。

よろけた先に、
一ノ瀬くんがいた……んだけど。
そしたら」


「ほら、やっぱり! 転んだだけじゃん!」


「なーんだ」


「ま、羽衣にかぎってそんなことねー」


「羽衣、よく転んでるもんね。
ケガしなくて良かったよ」


「噂って怖いね」


そ、そうだよね、

転んだだけ、だよね。


でも……


ワイワイと盛り上がる
みんなの真ん中で、

朝の出来事を思い返していた。