声、大きかったかな。

中学時代、
私も山田も話し声が大きくて、
授業中によく注意されてたっけ。


と、思った瞬間、

一ノ瀬くんの大きな手のひらに、
手首をつかまれて

飛び上がった。


ひえっ!


「……天野」


「は、はい!」


ぎゅっと手のひらに
力を入れた一ノ瀬くんに

心臓がドキンと大きな音を立てる。


ドキドキしながらも、
おそるおそる視線を落とすと、

上目遣いで
私を見上げてる一ノ瀬くんと
目が合った。


「い、一ノ瀬くん、どうしたの?」


「……ん?」


一ノ瀬くんと顔を見合わせて、
ハッとする。


あっ! やっぱり、私、

うるさかったんだ!


「ご、ごめんっ! 静かにするね!」


一ノ瀬くんに謝って、
少し声を落として、

山田に教科書を渡した。


「はいっ、これ! 

山田のイビキ、
結構すごいんだから。

寝ちゃダメだよ」


「まじかっ。
つうか、天野、顔あかくね?」


「や、いや、そんなこと……
ないと思うっ!

そ、それより、
もうすぐ授業はじまるから
早く戻ったほうがいいよ」