「…じゃあ、三上さん。三上さんって呼んでいいですか?」

「どっ、どうぞ! 呼びやすいように呼んでくれれば…!」

「じゃあ、今から三上さんって呼びます」

「は、はいっ」



今さら自己紹介をし合っていることが何だかおかしくて、僕は少し笑ってしまった。


高校には女子がほとんどいなかったから話す機会もほぼなかった。それにしたって、もうちょっと上手く話せていた気がするけど…………何でだろう、三上さんとは上手く話せない。


まだ知り合って日が浅いからかな。それともここまで女子と長く話したのが初めてだからかな。

どっちにしろ、慣れれば普通に話せるようになるか。




「滝本くん…?」

「ん?」

「何で、笑ってたんですか?」

「え、あ、何でもないです! 気にしないでください」


慌ててそう言うと、彼女……三上さんは、今日のカラオケ思い出したんですか? と言いながら、僕の少し前を楽しそうに歩いた。





「あ、私ここ右なので…」

しばらく今日の話をしながら歩いていたら、三上さんが交差点で立ち止まった。


「あ、解りました、気をつけて」

「はい、ありがとうございます」

「また明日、三上さん」

「滝本くん、また明日!」


お互いがさっき決めたばかりの呼び名を使って挨拶を交わした。


僕の心の中は何だかほかほかと温かかった。








( 三上さん )