教室内には、ところどころ同じ中学や知り合い同士らしき固まりができていた。

入学式が終わり、下を向きながら席に着く。


すると、一人の女子が話しかけてきた。


「ねぇ、間宮さんっていうんだよね。お昼どうする?」


さらさらのロングヘアに、ぱっちり二重の目が華やかな女の子。

確か、穂波さんって言うんだっけ。


「あ、私、お弁当です」

「本当? わたしも。よかったら一緒に食べようよ」

「お願いします!」


嬉しさと驚きが混ざり、敬語で返事をしていた。


私と穂波さんの共通点は、同じ中学の友達がクラスにいないことらしい。

一緒に過ごす人ができて、ひと安心。

でも、上手く話を合わせられるかは不安だった。

穂波さんはコミュ力高そうだし、私とは真逆っぽい性格なんじゃないかな。


昼休みになり、穂波さんと二人で机を合わせお弁当を広げた。


「間宮さん、お昼それだけ?」

「うん。家におかずがあまりなくて」

「へーそうなんだ」

「…………」


派手でかわいい彼女の弁当と比較し、私のは地味かつ少なめ。

一緒に食べるんだったら、同じくらいのスペックにした方がいいのかな。でも家にそんな余裕ないし……。


考え込んでいると、穂波さんは話題を変えてきた。


「間宮さんは、部活どうするの?」

「私は入らないかも」

「まじ? もったいない、せっかくの高校生活なのに!」

「そうだよね。どうしようかな~」

「…………」

「…………」


どうしよう。会話が続かない。

まわりの男女の楽しそうな声が大きく聞こえた。


一つの話題が終わるたびに、お互いご飯やおかずをはしでつまみ、口に入れる。


私、気の利いたこと言えていない。

でも変なことを言ったら機嫌を悪くさせるかもしれない。


半分くらい食べ終わった頃、穂波さんは教室内を見渡しながら言った。


「他の子にも話しかけてみようよ」と。


うん、と返事をする前に、穂波さんはすぐに別グループに声をかけに行った。