――古ぼけたトイレの中で、赤ん坊は寝がえりをうった。
風が吹いただけで、ミシミシと壁がきしむ音がする。

赤ん坊が唯一安らげるこの場所は、老朽化が進み、限界が訪れようとしていた。

どうしよう……と赤ん坊は思う。

ワタシはどこへ行けばいいの?

しばし考えていた赤ん坊は、ステキなことをひらめいた。

――そうだ。
いっそ人間に取り憑いてしまおう。
そうしたら、ワタシのこの力で、もっともっとオモシロイことができるハズ……。
ああ、一体どんな人間に取り憑こうかな。

ママみたいに美人だけど、頭が悪いのはイヤ。そのせいで殺されたんだもん。
心がキレイでかわいい女子になりたい。そうして、パパみたいに女たらしじゃなくて真面目な男子と付き合って、幸せな学校生活を送りたい。

タノシミだな……。

赤ん坊の、キャッキャッと笑う声が、古ぼけたトイレに響いていた……。