「……自分でやれよ」

勇吾は冷たく言い残し、洗面所へと向かった。

ザブザブと冷たい水で顔を洗い、ため息をつく。

宝くじが当たって以来、母は変わってしまった。

借金を返しても、金は唸るほど残っており、すぐに仕事をやめた母は、今まで苦労してきたから、と言い、毎日山のように買い物を楽しんでいた。

こっちの方がおいしいから、とデパートで買った総菜が食卓へ並ぶことが増えた。
確かにごちそうだったが、勇吾は母が作ってくれたチャーハンなどのほうが好きだった。

母が大金を持っていることを知ると疎遠だった親戚や友人が、家へと殺到してきた。

歯の浮くようなお世辞ばかり言ってくる奴らに、母は気を良くし、酒などをおごり、ハイエナのような仲間を引き連れて、毎晩街へと繰り出していた。