「二人とも喋りすぎだ」

「「永瀬さんっ!」」

話を聞き終えたタイミングで病室のドアが開き智大が姿を見せると、女性警察官二人は嬉しそうに微かに頬を染め、声も少しだけ高くなった。

そういえば、スポーツが出来て顔も良い智大は昔から女性にモテてたな……。とぼんやり考えていると藍里はふと疑問に思った。

あの様子を見ても今も智大はモテていそうだ。
なのに何故、昔から嫌っているはずの自分とわざわざお見合いして、さらには結婚までしたのか。
何か裏があるのかと俯いて考え込んでいると、おい。と頭上から声が聞こえた。

「え……」

顔を上げると藍里を見下ろしている智大と目が合った。
慌てて顔を反らして室内を見るが、いつの間にか女性警察官二人の姿は消えていた。

「聴取は終わったらしい。医者も調子がいいなら帰っていいと言ってたが、どうする?」

「あ……帰り、たい……」

明日は午後から仕事だし、スーパーで買った生物も気になる。
智大と二人きりの家に帰ることを考えるだけでやっぱり息が詰まるが、このまま病院で過ごすのはなんとなく嫌だった。

「分かった。手続きしてくるから帰る準備しておけ」

どことなく嬉しそうな表情をした気がする智大はそれだけ言うとすぐに後ろを向き部屋を出ていった。
きっと行動の早い智大のことだ、すぐに帰ってくるに違いないと藍里はゆっくりベッドから降りて帰り支度を始めたのだった。