「お前は今日から俺と暮らす。そうすれば全部チャラにしてやる」



突然の提案に淡い期待を抱いた。


だけど考えた。


そうだとしても、そっちにメリットはあるの?


何かいいように利用されている気がする。



「出ていったって、黒帝に追われるだけだ。それでいいのか?」



迷うわたしに追い打ちをかけるように、荒瀬さんの声が思考を止める。


黒帝の名を耳にした瞬間、ドクンと心臓が鈍く脈を打った。



「俺といればその可能性はない。
仮に出くわしたとしても、俺が守る。
お前は大切な女だからな」

「……」

「最後にもう一度問う。
お前の人生、俺に委ねるか?」



その問いにわたしは───うつむくように、うなずいた。




「ククッ……決まりだな」



直後、喉を鳴らし、わたしを抱き寄せる帝王。



「俺の勝ちだ」



不敵な笑みが何を意味するのか。


何も知らぬまま、わたしは帝王の所有物となった。