数秒後、玄関先でサムターンの回った音が聞こえた。




「……てめえら、来るのが早いんだよ」

「はあ?さっさと来いって言ったの兄貴だよな」

「うるせえな、てめえも俺の弟なら空気を読め」

「……へ?ごめん、よく分かんない」



荒瀬さんと、若い男の人の声がする。



「ほっほ、なるほど、よほどあの娘が気に入ったご様子で。
さて、彼女の容体が気になるので診察させてもらってもよろしいですかな」



もうひとりおじいさんの声も。


容体とか診察なんて言ってるから、お医者さんかな。


ひとりベッドに座って様子をうかがっていたら、とつぜん睡魔に襲われてそのまま横たわった。




……なんかもう、どうだっていいや。


どうせいらない命だもん。


わたしによく似たシンデレラだって、所詮(しょせん)夢物語。


ありもしない幸せを待ち望むことも馬鹿らしくなっちゃった。




そうしてわたしは眠りにふけった。


でも、その後は不思議と、悲しい夢を繰り返すことはなかった。