「生け贄こっくりさん?!」

夜の11時を過ぎているにも関わらず、自分の部屋いっぱいに大声を上げた陽一。陽一の様子を見てメリーは驚いても仕方がないと分っていた。なぜなら----

「ちょっと待てよ!テレビは、中学校で女子中学生4人が何者かに襲われて意識不明で重傷って言ってたぞ?!生け贄こっくりさんなんて聞いてない!」

陽一は、毎日チェックをしている情報番組から得ていた情報に間違いがないと確信があったからこそ、メリーの言っている言葉を理解する事が出来ないのだ。

『表沙汰ではね。3日前、隣町の中学校で4人の女子中学生が生け贄こっくりさんをしている最中に何者かに襲われて意識不明で重傷。
まだ世間では、彼女達が生け贄こっくりさんをしていたのは知られていないわ』

驚いて混乱をしている陽一を見ても、メリーは冷静に話し続けた。メリーの態度は、当然だと言わんばかりに示していた。

「なんで、嘘をついたんだ?」
『嘘を付いていたのは、生け贄こっくりさんに類似した第2の事件を生み出さないためよ。だから警察側が極秘にしたの。私たちは幽霊だから、すぐに警察内部の事情を手に入れたわ』

メリーたち・・幽霊は、壁があってもすり抜けられる。厳重な警備がされている警察でも簡単に情報を知ることができのだ。

メリーは真実を知っているからこそ、冷静に話ができていると納得する。しかし、どうしても納得しがたい理由があった。

「いや、待てよ。生け贄こっくりさんは分かんねぇけど、確かこっくりさんって----」

『存在しないわ。こっくりさんは、人間が自己暗示を掛けているだけ。だから、G.S.Sには存在しないし、幽霊でも何でもないの。もちろん、生け贄こっくりさんもね』
「そうだよな!存在しないよな!」

陽一はメリーの答えを聞いて安心した。一般的にはこっくりさんを幽霊の類に考えている人もいるが、陽一のなかではこっくりさんの正体を知っていた。

しかし、メリーに関わったことで迷信だと思っていた花子さん、貞子、メリーさんが存在していたと分かり、今までの陽一の常識が覆されていた事にショックを覚えていたのだ。

 唯一、こっくりさんが居ない存在と知り、自分の考えは間違ってなかったと酷く安心する。メリーは、陽一がそんな事を考えているとは気づかず事件の話を進める。

『でも、この事件は不審な点が多いの』
「不審な点?」
『ええ。まず一つは場所と発見時間。彼女達が生け贄こっくりさんを行っていた場所は、古い校舎の5階建て。しかも、階段は一つしかなくて階段から一番遠い端の教室。その教室は、机が4つだけで掃除用具入れすら無い状態。

で、彼女達が襲われたのは17時00分。この時間は、縄で縛られていた少女が身につけていた腕時計が壊されて止まっていたの。そして、学校の警備員が事件の校舎に入ったとき悲鳴が聞こえた。急いで、駆けつけて彼女達をを見つけて通報したのが17時10分』
「それのどこがおかしいんだ?犯人が隣の教室に隠れたら見つからないだろう?」

陽一は、事件現場が校舎ならどこでも隠れられるはずと考えた。

『それは無理よ。1階から5階の教室は、彼女達が使っている教室以外は錠が施されて壊された形跡は無い。窓も開けられないようすべて施錠されていた。

裏門と正門にはそれぞれ防犯カメラが2台ずつ付けられているの。彼女達が襲われるその日は、怪しい人物が出入りするのは目撃されていない。唯一、警備員だけが午後16時50分に入るのが確認されている』
「犯人は、警備員じゃないのか?全速力で走ったら襲えるだろ?現に、警備員の人は事情聴取を受けてるってテレビで言ってたぞ」

陽一は、メリーの話を聞いてますます謎が深まり、報道内容との食い違いに違和感を覚える。

『それは出来ないわ。事件当日、彼は勤務をしながら賭博ゲームを運営してたから無理よ』
「はぁ?なんだよそれ?!」

メリーの話を聞いた陽一は、安全を守る彼らが本業を疎かにして違法をしてまでする行為にただ驚きを隠せなかった。

『彼の勤めている警備会社は彼の父親が創立者なの。だから、彼は好き勝手にしてきたらしいわ。勤務をしながら携帯サイトを通して違法な賭博ゲームを作っていたらしいの』
「最低だな」
『えぇ。携帯にリアルタイムの記録が残っているのが証拠なのよ。それに彼女達の怪我は鋭く大きな凶器で切られた後があるから、警備員が隠すのは無理よ』
「でも、警察は何も言ってなかった」
『警察は、彼をどうしても犯人にしたいの。不審な点を全て認めないために』

メリーの言葉に、陽一はゴクリと唾を飲み込む。