「紗和?」
「………」
「なーに考えてるの」
途端、後ろから手が伸びてきて、わたしのおなかの前でその手が組まれる。
がっしりと伊織にとらえられた証拠だった。
「一緒に明凛に行く許可をもらった時のことを、思い出してたの」
「…あー。父さんが余計なこと言いやがったやつ」
「伊織どれだけ恨んでるの…」
「当然じゃん。…まぁ、守るけどさ」
“3年間学年トップの成績を維持して、高校生の本分として申し分ない結果で、紗和のそばに居ます”
“わたしも、文武両道で正しく真っ当に、3年間駆け抜けることを約束します”
それは、わたしたちが自分で課したこと。
「でも伊織、お弁当自分で作ってないのに嘘ついたでしょ」
「聞いてた?でも料理できんのは本当だろ?紗和ほどじゃないけど」
「もう…。わたしが作ったんですーって言ってやりたかった」
「ははっ、だめだよそんなの。…紗和が俺の女だってばれちゃう」
未来のための3年間だと
はせる想いはいつも自分への支えになっていた。
――…これからも、この幸せが変わらないようにと、強く願っている。