ふぅん、好きなんだ……。


そこには幾つものシルバーアクセサリーが並んでいた。


「……」


それに、なんだろう。
このいい香りは?
甘い……でもちょっぴりスパイスの効いた香り。


香水……なのかな?


って!
あたしってば何してんのよ!
ここに来た目的忘れたの?


「……すぅーっ、はああ」


大きく深呼吸をして、あたしは意を決して室内へ足を踏み入れた。


黒で統一したシンプルな家具。

イケナイとわかってても、あたしの視線は部屋をぐるぐると見渡してしまう。


――ゴクリ。


ようやくたどり着いたベッド。


一定のリズムを刻む布団から、寝息が聞こえる。


おずおずと中を覗き込む。
要の顔をしっかりと見るのはこれが初めてだ。


あれ?
わっなんだかイケナイ事してる気分。

だってだって……すっごくかわいい寝顔!

うはぁ……睫毛長い!

じぃぃー。

思わず見つめてしまう。


綺麗な肌。
思春期の高校生なら必ず出来てしまうニキビなんてどこにもない。

鼻はそんなに高くはないけど、スッと筋が通ってて、形がいい。

薄い唇は熟れた果実のように赤く色づいている。

男の子なのになんでこんな綺麗なんだろ。



ま、負けた……。




「んー……」



ドキっ!


突然要が寝返りを打ち、あたしは思わず仰け反ってしまった。



あわわわ

な、なにしてんだろ。


あたしは、スウっと息を吸い込んだ。



「か、要……くん?」


遠慮がちに要の肩を揺する。
だけど、一向に起きる気配がない。

……む。
早く起きてくれないかなっ!


「要くん!朝だよっ 起きて……わっ!?」



え!?


不意に腕を引っ張られる。



「……ちょ、ちょっと!」



その瞬間あたしはなぜか要の腕の中にいた。


「……」


な、なに、この状況!?


ドキン ドキン
  


予想外の事態に、心臓が物凄い勢いで加速をはじめた。