でも、氷上は心音の中学時代の同級生で、付き合いも長いから、もしかしたらずっと好きだったのかもしれない。


仲良くなれたと思っていたけれど、心音にとって俺はただの友達どまりだったのかもしれない。


正直俺だって、氷上とうまくいってほしいなんて1ミリも思わないし、あいつに心音を渡したくなんかない。


せっかく仲良くなれたっていうのに、この関係を終わらせたくはない。


だけど、心音の気持ちを考えたら、本当にそれでいいのか迷ってしまう。


俺はこのまま心音と一緒にいていいのかって。いつまでも恋人のフリなんかさせてていいのかって。


そもそも心音のような花園のお嬢様が、俺みたいな奴と仲良くしてること自体がレアなわけで。もともと住む世界が違う存在だった。


花園は進学校で頭もいいし、緑丘とは学力的にも全然レベルが違う。俺らは普段あまり真面目に勉強なんてしないけど、心音は成績が下がると親に怒られると言っていた。


氷上の通う星川なんて、県内トップクラスの進学校だ。巷では星川の生徒は将来有望なエリートだなんて言われてる。


もしかしたら心音の成績が下がったのも、俺が放課後連れ回してたせいもあるかもしれないし、心音のためを思ったら、彼女は俺といるより、氷上のような奴と一緒にいたほうがいいのかもしれない。


心音があいつのことを好きなら、なおさらだ。