思いがけないことを言われて、再び目を丸くする私。


私を見つめる椿くんは、なぜか少し不安そうな表情をしていて、それを見たら胸がチクッと痛む。


どうして、そんなことを言うのかな。


椿くんは私に嫌われたら、困るの……?


「き、嫌いになんてなるわけないよっ!」


思わずぎゅっと手を握りしめ、力強く言い放った。


「だって、椿くんは、私のために怒ってくれたんだもん。嫌いになったりなんてしないよ」


「心音……」


「守ってくれて、ありがとう」


笑顔でお礼を告げると、その瞬間椿くんが大きく目を見開く。


「……っ。ならよかった」


口元に手を当てながら、ホッとしたように呟いたその顔は、なぜか少し赤くて。


その表情を見ていたら、胸の奥がムズムズして、なんとも言えない気持ちになった。


やっぱり椿くんは、とっても優しい人なんだって思う。


さっき怒ってる時の彼は、確かにすごく怖かったけど、むやみに暴力をふるう人じゃないってことはよくわかったし。


私のことを、いつだってすごく思いやってくれていることは、確かだから。


そんな椿くんを嫌いになったりなんて、できるわけがないよ。


むしろ、知れば知るほど惹かれているような気がするよ。


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