真っ正面には、蓑島くんの綺麗なパーツが並んだ顔が。
二重の大きい切れ長の形の瞳は、私の目を見つめている。
その顔はどんどん近付いていて…。
「…だっ!…ち、ちょっと!」
「え?何で?俺の彼女になんでしょ?」
そのイケメン顔から顔を離すが、すでに私の右の頬に手が添えられていた。
き、キス…!される!
「ち、ちょっと待って待って!…私、キスしたことないし、ま、まだ蓑島くんのこと!」
躊躇してしまい、思わず手で自分の口元を覆ってしまう。
その様子に、蓑島くんはまたブッと笑った。
「…じゃあ、俺のこと好きになったら、その手…外してな?」
そして、そのまま顔を…唇を近付けてくる。
思わずグッと目を瞑ってしまうと、口元を覆った手の指に、彼の唇が触れた。
それは、温かくて柔らかい感触で。
触れた部分は、一気に熱を帯びる。
指に触れた唇の感情が無くなり、目を開けると、蓑島くんの顔はまだそこにあった。
目が合うと、一気に顔が熱くなって恥ずかしくなる。
蓑島くんが、私にキスをした…指越しだけど。
でも、指にキスされた…!
「…ははっ。可愛すぎんだけど?」
ニッと笑ったまま、おでこを合わせてくる。
またしてもの接近に、胸が爆発しそうになった。
ち、ちょっと…!
「…大切に、溺愛するからな?」
「うっ…もう」
「星月の『もう』が可愛すぎてキュン死なんですけど?」
「…もう!」
…こうして、私達の新しい関係は、幕を開けた。
傷だらけのわたしを慰めるだけの、偽カップルの関係。
何だか奇妙な、よくわからない関係。
でも…後悔なんてしないよ。
今もひたすら駆け抜けるだけ。
光陰矢のごとし、命短し恋せよ乙女。
朝の日差しの眩しい中でも、雨が心を濡らす時も。
私らしさを、大事にしたい。