「ここにありますよ?見ます?」


そう言って、自分のカバンからスコアブックを取り出し、紫苑先輩に渡した。

開いて一緒に覗き込む。

その後ろでは「お疲れさまです」と紫苑先輩に挨拶する部員が次々と通り過ぎていった。

「…うーん。苦しい試合でもなかったけど、シュート数少ないな…」

「相手、地味なディフェンス力ありましたからね」

「お疲れさまでーす」

「…お疲れ。…もうちょいライン上げるべきだったかな」

「向こうのカウンターはうちが対応出来ない程ではないと思うんで、もう少し攻めに入っても…」

「…お疲れさまでぇーすっ!」

「…し、しつこいな!誰!…わわっ!」

「えっ!…えぇっ?!」



…あまりにも帰りの挨拶がしつこすぎて、紫苑先輩が振り返った、その時だった。

私と紫苑先輩の間から、ひょっこりと顔を出す人物がいる。

私達の間を割るかのように、帽子のツバが現れた。

ここはサッカー部のグランドなのに、なぜかサッカー部以外の人物…野球帽にベースボールTシャツ姿の野球男児がいて、思わずビックリしてしまう。

し、心臓飛び出るかと思った…!




それもそのはず。




「お疲れさまでーす!サッカー部の皆さん!」




頭の帽子を脱いで、軽く礼をしている。

頭を上げた顔は、舌をペロッと出していて、それはまるで、いたずらっ子のようだ。



「み、蓑島くん…!」



こんなところにまで!