「そ、それは……」

抗えないようなまっすぐな瞳。その瞳に見つめられると私はおかしくなる。

この人に逆らってはいけないと本能が告げてくる。

もうこうなったら正直に言って楽になるほうがいいのかもしれない。

まちがいなくあなたに惹かれてるということ、あなただけにどうしようもなくドキドキしているのだと。

でも、もしまた傷つけられたら?

ボロボロに傷つけられた過去の恋愛が、私の心を億劫にさせる。

目の前の篠宮先生を信じたいのに、どこかでそれを邪魔する私がいる。これだけ深いトラウマになっていたなんて。

──ピリリリリ

ベッド脇のテーブルの上に置いてある篠宮先生のスマホから、私たちの仲をを引き裂くように鳴り響く着信音。

「出て下さい」

「今は柚のほうが大事だ」

「そうしてくれないと落ち着かないのでお願いします」

「ったく、わかったよ。もしもし」

渋い顔で電話に出た篠宮先生にホッとしつつ、ベッドからのっそり起き上がる。

篠宮先生は神妙な面持ちで電話の相手と会話していて、私は音を立てないようにしてベッドルームから出た。