「ありがとう。きっと来るね」

 羅良は母の小さな体を抱きしめる。母はそんな羅良の背中をさすった。

「あとは、希樹と裕ちゃんだね。ふたりとも、早く幸せになっちゃいなよ」

「裕ちゃんは大丈夫。私は……どうかな。私も初恋をだいぶこじらせちゃったし」

 うなだれると、羅良は深いため息を吐いた。

「裕ちゃんも苦労するわ」

「えっ?」

 首を傾げる私の肩を、羅良が強い力で掴んだ。

「ううん。きっとすぐあっちから連絡があるだろうから。二人で落ち着いて話し合うのよ。もう自分に嘘を吐かない。わかった?」

「は、はい」

「よろしい」

 羅良は手を放し、部屋を出ていく。

 見送りは、そこまでにした。彼氏さんが、緊張してしまうだろうから。

「またね!」

 最後に、羅良が振り向いた。

 その顔には、また幸せが咲き誇っていた。