「……栞菜」



いつもと違う、真剣な口調。


なぜか息を止めてしまう。



「俺……」



廉くんの吐息が、耳元で聞こえる。








「………。

やっぱ、今はまだ、いい」



廉くんは私の体を離すと立ち上がった。


とまどって見上げると、彼はわたしの顔を見ずに保健室をでようとする。



「…あの、怪我は」



「あー。もう、思い出しても頭きたわ」


…え。



「どこ行くの…?」


「試合、行く」



止めようと慌てるわたしに、廉くんは告げた。



「ご褒美、覚悟しとけよ」



「でも……っ」



「あんな奴らにつけられた傷くらいで、俺が負けるとでも?」



その笑顔に、わたしはぞくりとした。









その後のプレーは凄まじかったらしく、


ほんとに優勝してしまった廉くん。



彼は、やっぱり、すごい……(こわい)人です。