「やっぱり。なにか秘密があるんだね、希樹ちゃん」

 答えられずうつむくと、みんなの足音が返ってきて、健ちゃんは腕を放す。

「羅良さん、あなたお洋服がとても少ないわね。結婚しても女を捨てちゃダメよ」

「お前と違って浪費をしないんだよ。いいことじゃないか」

 賑やかな声に、健ちゃんが笑顔で振り向く。

 暴露されるんじゃないかと気が気じゃなかったけど、彼は意外になにも話さなかった。

「早く孫の顔を見せてね」

 二時間後、全世界の嫁に嫌がられそうなセリフを残し、義母は去っていった。

 一方的に自分の話をする義母に相槌を打つだけでよかったから、その点は助かった。

 お義父さんと健ちゃんが、義母のあとを追うように出ていく。

 裕ちゃんと二人で見送り、ホッとした瞬間、脱力した。

 廊下に座り込んだ私に、裕ちゃんが驚く。

「どうした?」

「……どうしよう、裕ちゃん。健ちゃん、私が希樹だって、気づいちゃったみたい」

「なんだって」

「筋肉はごまかせないの」

 頭を抱える私を起こし、リビングに誘導する裕ちゃん。

「なんだそのふざけたセリフは。気にしなくていい。ただ、からかわれただけだ」

 とは言いながら、裕ちゃんの顔にもかすかな焦りが見て取れた。

 裕ちゃんの言う通り、ただからかわれただけでありますように。

 せっかく重大なミッションが終わったのに、その夜はなかなか寝付けなかった。