「希樹ちゃんに会いたいなあ。俺、初恋が希樹ちゃんだったんだよね」

「えっ?」

 思わず声が裏返ってしまった。

「羅良ちゃんはおとなしくて全然遊んでくれないんだけど、希樹ちゃんは俺に手加減なしで、サッカーとかバドミントンとか、よくやってくれた」

「そうだっけ……」

「全力なのが嬉しかったなあ」

 懐かしい日を思い出し、健ちゃんが目を細める。

 その横顔が裕ちゃんに似ていて、どきりとした。

「ねえ、羅良ちゃん」

 不意にこちらをむくから、余計に焦る。

「な、なに?」

「小さい頃から大して運動していないのに、どうしてこんなに綺麗な腕をしているの?」

 伸ばされた手に、うっすらと筋肉がついた腕を捕まれる。

「背丈や顔立ちはたしかにそっくりだけど、筋肉はごまかせないよ」

「何言ってるの?」

 筋肉はごまかせないって。筋肉は裏切らない、みたい。筋トレ番組の決まり文句か。

 健ちゃんは逃げようとした私の腕をぐいと引き、耳に唇を寄せて囁く。

「あなた、羅良ちゃんじゃない。本当は、希樹ちゃんでしょう」

「は……!?」

 言葉を失う。何も、口から出てこない。

 まさか、こんなにすぐ見破られちゃうなんて。

 どうしよう。いったい、どうしたら。

 どくんどくんと叫ぶ心臓が痛い。