目の前には、夕日を映した鮮やかな色の海と、黒い島影。

 後ろには、雪が降ったら、越えられなくなる高い山。

 横を歩いて居るのは、美しい夫。

 美しいが、困った夫だ……、と真昼は、まったくこちらを見ていない、春物の白いコートを着た男を見る。

 なにがどうして、こうなった?

 っていうか、そもそも、何故、私は此処に居るのだろう、とすごい勢いで海の向こうに沈んでいく夕日を見ながら、真昼は思っていた。



 ああ、そう。
 おばさんに売られたんだった、と真昼は思い出す――。