反応しづらい言葉に口籠もっていると、天李さんが、ふと振り返った。


「それにしてもあなたの部屋、異国語の本もあるのね…歴史書に、こっちは医療まで…」


「読めるんですか?」


自分以外に異国語を理解する人を見たことがなかったため、素直に驚く。


「ええ、異国には昔から興味があったから…いつか必ず行きたいと思っているの」


心なしか、表情が輝いているように見える。


恐らく、自分も同じ顔をしている。


一瞬目を合わせ、同時に立ち上がり本の山へ向かう。


「こんなにたくさんの書き込みまで…あ、山南さん、この本のここの解釈が少し違うわ」


「本当ですか?」


「ええ。ここは…」


その後、結局隊士が夕餉に呼びに来るまで話が尽きることはなかった。