あのストーカー、まだウチのマンションの近くにいるのかな?


だったら、帰りたくない。



もう12月だから、こんなところで立っていたら寒い。


とりあえず近くのホテルにでも泊まろうと辺りを見回すと、一台の車がクラクションを鳴らして停まった。


車には『フローリスト花見』の文字。


坂下が亡くなってからずっと頼ってた、男友達の澤弥(タクヤ)。


向こうは私のコトが好きだから、いつでも甘えさせてくれる。


だけど、そんなんじゃダメだから…。


澤弥も28だし、そろそろ結婚とか話出てもおかしくない。


そこへ私が現れたら、澤弥は私を取るんだ。


もう頼ってちゃいけないって思って、最近はメールも送ってない。



なのに、何で、ここで会うかなぁ…。



「会えて良かった。

とりあえず乗って、話は中でしよう。」


「でも…。」


「手が冷たくなってるし、風邪ひくから。」


私は澤弥に手をひかれるまま、車に乗り込んだ。