「澤弥先輩、彼女を見せびらかしに呼ばないでくださいよ。」


「見せびらかしじゃないって、この近くのレストランで食事するんだよ。

じゃあな。」



澤弥に促されて、肩に手を回されたまま歩く。



背後から


「加奈子ちゃん、花見は諦めなよ。

杏世ちゃんじゃ、太刀打ちできる相手じゃないって…。」


なんて声が聞こえた。



私は歩きながら、澤弥に尋ねた。


「タクヤ、まさかあのコを振るために私を呼んだ?」


「いや、実際振ったのはアンからの電話を勝手に取ったとき。

ま、コレで諦めてくれると思うけどね。

元々好みじゃないんだよ、ベタベタ何か塗ってる髪って触るのやだし。」


澤弥はそんなコト言いながら、肩に回した手を頭に移して髪を触る。


「アンの髪、ホント綺麗だよなぁ。」


「タクヤのフェチぶり、もう病気の域だよね。」


「うわ、ひでぇな!」



レストランに着いて、ディナーしながら話すのは…。


今回の事件のこと。


「結局、犯人は事務所内部の人間じゃないんだって?」


ワイン片手に、澤弥が聞いた。


「事務所に出入してた清掃業者。

だから、見たことあったんだよね。」


「何だよそれ?

だったら、最初から事務所頼れよ…。」


…だよね。