・・・・・・仕方ない

顔は、一時二人の記憶を書き換えて、魔術で作りだした「偽の顔」を私の「元の顔」と認識させよう

名前もメイリンで通しているからさして問題は無い。本名で申請しても大丈夫なはず

思い立ったところで魔術を行使し、2人の脳内から私の容姿に関する記憶を全て書き換えた

残る問題は魔力のみ

これはもう、秘匿魔術で最低限の魔力しか測らせないようにするしかない

今なら誰にも気づかれないし、さっさと秘匿魔術を自分にかけ、魔力を隠した

これで大丈夫

私の魔術は完璧だから

さて、私が魔術をかけているうちに建物の中に入る琴葉先輩

大郷くんと二人で後を追うと、琴葉先輩は既に受付の女性に申請書を要求していた

仕事が素早い

「・・・・・・はい、ありがとうございます」

申請書を受け取り、こちらに戻ってくる

近くの机で書くことになり、私たちは広いエントランスの一角にある休憩スペースに向かった

ペンをもらい、個人情報諸々を書き込む

・・・・・・両親もしくは後見人の許可は丸にしておく

「これでいいですか」

「うん、大丈夫よ。それじゃあ提出しに行きますか」

「えっあ、俺も?」

「あったりまえでしょーが。これから申請してその後に魔力測定よ」

琴葉先輩と大郷くんがそんなやり取りを交わしている間、私は辺りを見回す

人が少ない

私たちを除けば10人程度しかエントランスに人はいない

ほかの部屋にいるかもしれないが、あまりにも少なすぎる

私が幼い頃は、とても賑わっていたというのに

皆、あの戦いで命を落とした

「小鳥遊さん?」

「っはい」

あの日の景色が脳内を駆け巡った時、大郷くんから名前を呼ばれる

「行こう。琴葉さんもう行っちゃったから」

「あ・・・・・・すみません」

「ううん、琴葉さんが早いだけ」

苦笑しながら、一緒に行こうと私に促す