水城さんじゃない……? じゃあ、すべて私の馬鹿な早とちり……だったの?

「君の言っていた週刊誌のことが何のことがわからなくて、さっき梨花から聞いたんだ。すまない、もし俺が誤解を招くような態度を取っていたのなら――」

「違います!」

水城さんに非はない。謝らなければならないのは、私のほうだというのに……。

言葉が思いつかず、私はとにかく全力で否定したくてブンブンと首を大きく振った。

「わ、私が全部いけないんです……私が」

寒いわけでもないのに声が震える。

「ホテルに戻ろう。このなりじゃ、ふたりともどこの店にも入れないからな。空いている部屋で休もう」

ふたりともずぶ濡れの姿に水城さんは苦笑いしている。私は身体を掻き抱いてまたふるふると首を振った。

「これ以上、水城さんと一緒にいる資格なんて……梨花さんが言ってたでしょう? 私は……私は有坂優香じゃなくて――」

「知ってるよ。“有坂優香”じゃなくて、君は“有坂愛美”だろう? さっき梨花が言っていたからじゃない、俺は……知っていたんだ。初めから」

「え?」

その衝撃的な水城さんの告白に、私は言葉を失った。顔をあげて瞬きするのも忘れて彼を見あげると、水城さんは眉間に皺を寄せて怒るでもなく、ただ切なげに目を細め私を見つめていた――。