あの人、あの晩私が見ていたってこと知ってた。

そして見ていた私をまるで共犯みたいな言い方した。

私の心の中を読み取っているかのように彼の声は妙に落ち着いていて、するりと私の胸の中に入ってきた。



でも、私がどきんとした本当の理由は――。



男と女の情事を見たことじゃない。




その光景が私の中で別の私を目覚めさせたということ。



昨日までの私の中には決して存在しなかった、まったく新しい別の私。

単純にセックスに対して興奮し、強く興味をもってしまったもう一人の自分自身にひどく戸惑っていた。

私の中の小さな宇宙が爆発する。

小さな炎が燃え盛り、その火の粉が舞い落ちる。

そして私の体の芯の部分に火を灯してしまった。




だからたぶん、私はランに本当のことを言えなかったんだ。