「ちょっとちょっと、アヤったら知り合いだったんだ」

窓を閉めたあとも、ランの声は上ずっていた。

「知り合いってほどじゃないし」

「だって、彼の方はちゃんと覚えてたじゃん。ねえ、どんな猫だったの?」

はあ?

猫ってさあ…裸の雌猫だなんて言えるわけないじゃんね。

そんなこと言ったら、私が覗き見してたって言ってるようなものだし。

「きれいな猫だったよ。若い雌猫」

そう。

確かに彼女はきれいだった。

しなやかに体をくねらせ、彼の体にしがみつき、それはそれは美しい雌猫。

「なんだって、メスかどうかまでわかるのよ」

ランは納得がいかないみたいだったけど、私はそのまんま寝たふりをした。