そしてレストラン予約の十九時。

水城さんの店であるパリメラ本店は恵比須にある。行ってみると、自社ビルのグランドフロアに店舗があり、その上が本社オフィスの階層になっているようだ。五階建てで間接照明が白い外壁を照らしている。

うぅ、気楽に入れるような場所じゃないのはわかっていたけど、さすがにこの格好はまずかったかな……。

私は仕事を早々に終わらせて化粧も普段のままやってきた。ひざ丈の淡いピンクのスカートに白いカットソーというカジュアルな格好で、きらりと眼鏡を光らせる。髪の毛くらいは下ろそうかと思ったけれど、一日中ゴムで結んでいたため、くっきりクセがついてしまっていて結局結んだままだ。

「いらっしゃいませ」

「あ、あの、十九時に予約をしていた有坂ですけど……」

意を決して店に入ると、綺麗な女性コンシェルジュが笑顔で出迎えてくれた。

わ、すごい……。

店内はクラシックが優雅に流れていて、ギラギラになりすぎない程度の静かな照明が心を落ち着かせてくれた。所々に季節の花をつけた観葉植物が飾られていて、テーブルにはピシッと糊の効いたクロスが一寸の歪みもなくかけられている。床にはサイドに刺繍を施した絨毯が敷かれてあって、まるでおとぎ話のお城へ来たような感覚になった。そして、一番奥を見てみると、演奏用のグランドピアノが置いてあるのに気づく。

すごく高そうなピアノ、きっといい音が出るんだろうな……。

こんな高級レストランで、一度でいいから演奏してみたい。ここで演奏する人は一体どんな人なのか、と想像しながら案内された席に着いた。